ゲティア問題とは?わかりやすく簡単に

哲学

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ゲティア問題とは、アメリカの哲学者ゲティアが提起したそれまでの知識の定義(JTB定式)に対する反論のこと。

知識とは

古代ギリシア哲学以来、知識とは「正当化された真なる信念」と定義づけられてきた。この定義によれば、三つの条件(Justified, True, Belief)を満たせば知識と呼ぶことができる。これをJTB定式という。三つの条件を以下に示す。

信念(Belief)

信念とは、思っているということ。たとえば、Aさんが9時だと思っていて9時だと主張する場合、Aさんの主張に信念があるといえる。もしAさんが10時だと信じているのに9時だと主張している場合は、信念はない。

真(True)

真とは、本当であるということ。たとえば、Aさんが9時だと主張し実際に9時だった場合、Aさんの主張は真といえる。もし10時だと主張している場合は、真ではない。

正当化(Justified)

正当化とは、正当な理由があるということ。たとえば、Aさんが手元の時計を見たうえで9時だと主張する場合、Aさんの主張は正しいといえる。もし根拠なく9時だと主張する場合は、正当化されない。

ゲティア問題

1963年、アメリカの哲学者ゲティアが正当化された真なる信念は知識かという論文で、2つの反例を示しJTB定式に反論した。

反例1

スミスとジョーンズが採用面接を受けている。この時スミスは、ジョーンズが採用され、ジョーンズのポケットに10枚の硬貨を持つ確固たる証拠を得る。たとえば、ジョーンズの採用を直接社長から聞いたり、ポケットに入っている硬貨を直接数えたとする。

そこでスミスは「ポケットに10枚の硬貨を持つ者が採用される」と考える。実際にはジョーンズではなくスミスが採用され、さらに本人は気づいていなかったがスミスもポケットに10枚の硬貨を持っていた。

スミスの「ポケットに10枚の硬貨を持つ者が採用される」という考えは、社長から聞いたり硬貨を数えるといった正当な理由(Justified)に基づき、思い至り(Belief)、実際に10枚硬貨を持つ者が採用された(True)という結果から、JTB定式の3つの条件を満たす。

しかし、スミスはジョーンズが採用されると思っており、自分がポケットに10枚の硬貨を持っていることも知らなかった。偶然同じ結果にはなったが、スミスは本当に「ポケットに10枚の硬貨を持つ者が採用される」という知識を有していたといえるか。

反例2

スミスは、ジョーンズがフォード車を所有する確固たる証拠を持っている。たとえば、最近ジョーンズとフォード車でドライブに行ったばかりだとする。一方スミスはブラウンの所在を知らないとする。そこで、スミスは以下3つの命題を考えた。

命題1「ジョーンズがフォード車を所有しているか、またはブラウンがボストンにいる。」命題2「ジョーンズがフォード車を所有しているか、またはブラウンがバルセロナにいる。」命題3「ジョーンズがフォード車を所有しているか、またはブラウンがブレストリトフスクにいる。」

実際には、ジョーンズはフォード車を所有しておらずレンタカーであり、かつブラウンは偶然バルセロナに住んでいた。つまり、偶然命題2が正しかったことになる。

スミスは、ジョーンズがフォード車を所有しているという考えに基づいて命題を信じており、ブラウンの居場所を知らなかった。それにもかからわず、スミスは本当に命題2の知識を有していたといえるか。

ゲティア問題の解決策

ゲティア問題の解決策として、JTB定式は修正せずゲティア問題の正当化が不十分(証拠が弱い)とする考えや、JTB定式に4つ目の条件を追加するといった考えがある。以下に代表的な立場を示す。

因果説

JTB定式に加え、事実と信念の間に因果関係が必要という立場のこと。たとえば反例1でスミスは、10枚の硬貨を持ったジョーンズが採用されるという信念を持っていた。この信念と、10枚の硬貨を持ったスミスが採用されたという事実の間に因果関係はないと考える。

しかし、知識には因果関係が不要なものもあるという反論がある。たとえば哲学の世界では1+1=2を知っていても、そこに因果関係はなく単なる数字の規則と捉える。このように、正しさの根拠に経験を必要としない知識のことをアプリオリな知識という。

信頼性主義

JTB定式に加え、信頼できる信念形成プロセスが必要という立場のこと。つまり、偶然の一致は真なる信念が正当化されるとは言えない。たとえば、ヘンリーはとある町である建物を指さして納屋だと言った。

実はその町には偽物の納屋もあり、そのことをヘンリーは知らなかったが偶然本物の納屋を示していた。この時、ヘンリーは偽物の存在を知らず、その信念は信頼できるとは言えない。

その他の立場

その他、知識と呼べるかどうかは文脈によって変わるという立場(文脈主義)等がある。

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