ポアンカレ予想とは、フランスの数学者ポアンカレが提唱した単連結な3次元閉多様体は3次元球面と同相という予想のこと。
簡単に言うと、宇宙(3次元閉多様体)に輪を描いて、その輪が1点に縮むことができる(単連結)ならば、宇宙はだいたい丸い形をしている(3次元球面と同相)という予想。発表から約100年後の2002年、ロシアの数学者ペレルマンによって証明された。
命題の解説
単連結とは
図形に描かれた輪が、表面に沿って1点に縮むことができる性質のこと。簡単に言うと、図形に伸縮自在の輪ゴムをはめた時、表面から浮かせることなく輪ゴムが最後まで縮めば単連結といえる。たとえばボールは単連結だが、浮き輪は単連結ではない。
3次元閉多様体とは
局所的に3本の座標軸で表せる有限で縁や切れ目のない図形のこと。わかりやすいように次元を落として説明する。2次元閉多様体の例に地球表面がある。地球表面は、局所的には2本の座標軸(緯度と経度)で表せる。また大きさが有限で縁なくつながっている。
3次元球面とは
同相とは
歴史
背景
高次元での証明
数学者たちは、ポアンカレ予想の扱う3次元空間ではなく、高次元から証明を進めた。なぜ高次元から取り組むのかというと、自由度が増し扱いやすくなるため。たとえば、あやとりの糸は3次元空間では絡まないが、地面に映った2次元の影は絡まって見える。
1961年、アメリカの数学者スメールは、5次元以上の場合に命題が成り立つことを証明した。1983年、アメリカの数学者フリードマンは、4次元の場合に命題が成り立つことを証明したが、それ以降研究は難航し行き詰った。
幾何化予想
1982年、アメリカの数学者サーストンは、3次元多様体が最大8種類の断片に分解できると予想した(幾何化予想)。この8種類の断片のうち、単連結な図形は3次元球面のみのため、幾何化予想が証明できれば、同時にポアンカレ予想も証明されることになった。
リッチフロー
ポアンカレ予想の証明
2002年、ロシアの数学者ペレルマンは、インターネット上にリッチフローを発展させた手法(手術)で、幾何化予想を証明したと発表した。2003年、彼はアメリカのプリンストン大学に招かれ、証明の講演を行うことになった。
講演はトポロジーの専門家たちの前で行われたが、トポロジーではなく微分幾何学や物理学の解法を用いた証明だったため、誰も理解することができなかった。2006年、複数の専門家チームの審査を経て、ポアンカレ予想の証明が確認された。
同年、彼はこれらの功績によりフィールズ賞を受賞したが、辞退し数学界から姿を消した。ちなみに2003年の講演には、フェルマーの最終定理を証明したアメリカの数学者ワイルズや、ノーベル賞を受賞したアメリカの数学者ナッシュも出席していた。
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