総合説とは?わかりやすく簡単に

生物学

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総合説とは、自然選択説をベースに遺伝学や隔離、突然変異等、様々な考えを統合した現代の進化論のこと。

背景

1859年、イギリスの博物学者ダーウィンが、著書種の起源で自然選択説を唱えた。自然選択説とは、生存競争によって生存に有利な変異の保存と不利な変異の排除が繰り返され、生物が徐々に進化(漸進的進化)するという説。

しかし自然選択説に基づく彼の理論(ダーウィニズム)は、種が変わる大きな変化(種分化)や遺伝、変異の仕組みを十分に説明できていなかった。一般に、種とは交配によって繁殖できる集団をいう。

自然選択説:https://nanikanochishiki.blogspot.com/2021/10/blog-post_52.html

種分化の仕組み

1868年、ドイツの博物学者ワグナーが隔離説を唱えた。隔離説とは、集団が分断され交流しなくなることで、進化が進み種分化が起きるという説で、今日この隔離が種分化の主な要因と考えられている。

遺伝学の誕生

1868年、ダーウィンは著書飼養動植物の変異でパンゲン説を唱えた。パンゲン説とは、後天的に獲得した形質(外観や経験、能力等)が子に遺伝するという説で、彼はパンゲン説で遺伝の仕組みを説明した。

1883年、ドイツの動物学者ヴァイスマンが生殖質連続説を唱えた。生殖質連続説とは、生殖細胞の持つ情報のみが遺伝するという説で、彼は進化が自然選択説のみで説明でき獲得形質は遺伝しないと主張した(ネオダーウィニズム)。

1900年、オランダの植物学者ドフリースらによって、チェコの司祭メンデルが発見した遺伝の仕組み(メンデルの法則)が再発見された。当初、不連続な進化に見えるメンデルの法則と、漸進的進化の自然選択説は相容れないものと思われていた。

遺伝の仕組み

一般的な生物は遺伝子をペアで持つ。これは両親の遺伝子を1つずつ受け取るためで、それぞれを対立遺伝子と呼ぶ。たとえばヒトの血液型はA、B、Oの3つの対立遺伝子によってAAとAOはA型、BBとBOはB型、ABはAB型、OOはO型に分類される。

また対立遺伝子の組み合わせ(AA等)を遺伝子型、発現する形質(A型等)を表現型、異なる遺伝子型(AO等)をヘテロ接合体、同じ遺伝子型(AA等)をホモ接合体という。メンデルは遺伝研究の先駆者で、メンデルの法則として以下3つの法則を示した。

優性の法則

ヘテロ接合体において一方の形質が発現する法則のこと。たとえば血液型では、AとOのヘテロ接合体(AO)は必ずA型になる。この時のAを優性遺伝子、Oを劣性遺伝子という。しかしAとBには優劣がなく例外的にAB型となる。この関係を共優性という。

分離の法則

対立遺伝子が融合せず分離して遺伝する法則のこと。たとえば血液型では、AOとBOの遺伝子型を持つ両親からは、親の世代では発現しなかったOOの子が1/4の確率で生まれる。このように、劣性遺伝子であっても融合されることはなく分離して伝わる。

独立の法則

2つ以上の異なる形質を発現する遺伝子同士が、互いに独立し影響を受けない法則のこと。たとえば、人種等の影響を無視すればA型の人に金髪が多いということはない。

変異の仕組み

1901年、ド・フリースが突然に表現型の異なる変異が起こること(突然変異)を発見し、突然変異説を唱えた。突然変異説とは、突然変異によって急激に種分化するほど大きな変化が起こるという説。このような突然大きく進化するという考えを跳躍説という。

アメリカの遺伝学者モーガンは、キイロショウジョウバエを用いて突然変異を研究した。その結果、種分化を引き起こすことは極めて少ないが、突然変異が自然選択説の変異が起こる仕組みを説明できると考えられるようになった。

集団遺伝学の誕生

1930年代、イギリスの遺伝学者フィッシャーらによって集団遺伝学が誕生した。集団遺伝学とは、集団内での遺伝を確率や統計等数学の理論を用いて明らかにする学問のこと。この学問により、対立関係にあったメンデルの遺伝学と自然選択説が統合された。

総合説の成立

集団遺伝学の発展に伴い初期の総合説が成立した。初期の総合説とは、突然変異により生じた変異が自然選択により種内に広まり固定され、隔離により種分化が起こるという説。

その後の発展

1968年、日本の集団遺伝学者木村資生が中立進化説を唱えた。中立進化説とは、生存に有利でも不利でもない突然変異の蓄積が進化の原動力になるという説。この理論の特徴は、突然変異が自然選択ではなく偶然に集団内に広まり固定されるという点にある。

このことから、中立説は自然選択説の適者生存に対し幸運者生存といわれる。この偶然性のある遺伝子の割合(遺伝子頻度)の変動を遺伝的浮動という。遺伝的浮動は小集団ほど促進される。たとえば、アメリカ先住民の血液型にはO型が多い。

これは、アメリカ大陸に渡った集団が少数で遺伝的浮動が促進されたためと考えられる。今日の総合説は、遺伝的浮動や中立進化説も統合しさらなる発展を遂げている。

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