テセウスの船とは、あるものの構成要素を入れ替えていき、全て入れ替わったときにそれは元と同じものと呼べるのかというパラドックスのこと。
たとえば、改造や事故の修理等で車の構成部品が全て入れ替わったとき、それは同じ車といえるのかというもの。同じものかということは、哲学の世界で同一性(アイデンティティ)という。
由来
ギリシャ神話に登場する英雄テセウスの船は30本の櫂を持っていたが、長い年月をかけ朽ちた木材が新しいものに入れ替えられ、哲学者の間で元の船と同じと言えるのか議論の的となったことに由来する。
主な例
テセウスの船は様々なケースで扱われる。以下に主な例を示す。
スワンプマン(沼男)
1987年、アメリカの哲学者デイヴィットソンがスワンプマンを発表した。これは、ある男が沼の近くで落雷に打たれ死んだ時、偶然別の落雷によって沼が化学反応を起こし物理的にまったく同じ人間が生まれた場合、それは同一人物かという思考実験のこと。
スワンプマンには死んだ男の記憶もあり、そのまま何事もなかったように帰宅し会話や仕事等死んだ男と同様に振舞う。一般に世界が物理的なもので構成されるとする物理主義では同一人物、物理的と心的なもので構成されるとする二元論では別人として扱う。
生命
生命の細胞はその一生でほとんどが入れ替わる。他にも臓器移植によって構成要素が入れ替わることや、将来脳が機械化されるかもしれない。これは自分を自分たらしめるものとは何かという問題に発展する。
川
鴨長明の方丈記冒頭「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。」は、この世が常に移り変わり無常ということを示している。ギリシャの哲学者ヘラクレイトスも同じ川には二度と入れないということを述べている。
文化財
絵画の修復が当てはまる。2012年、スペインで老婆が修復したフレスコ画が、かなり拙いものだったため話題となった。当初は非難が殺到していたが、やがて絵を元に戻さないよう署名運動が起こった。その後老婆は著作権を主張した。
また、一定の周期で建て直す神社がある。その際に本殿や神体を移す行為を遷宮と呼ぶが、本殿の構成要素が全て入れ替わることになる。
焼鳥屋のタレ
創業以来継ぎ足しのタレを売りにしている焼鳥屋がある。タレは数年でほとんどが入れ替わるという調査結果がある。タレが腐らない理由は低温殺菌が有力視されている。
アイドルグループ
モーニング娘。やAKB48にオリジナルメンバーは残っていない。タルトタタンに至っては、メンバーだけでなくプロデューサー陣も入れ替わりまったく性質の違うものとなった。
国内バンド
WANDSはオリジナルメンバー不在バンド。その他主要メンバーが脱退したバンドに、東京スカパラダイスオーケストラ、フジファブリック、相対性理論がある。作曲をしないボーカルを残し、メンバーが全員脱退したバンドにHOUNDDOGと彩冷えるがある。
HOUNDDOGはボーカルがメンバーを解雇し、反対に彩冷えるはボーカル以外が突然脱退した。後者はボーカルが洗濯物を干しているという記事をブログに投稿した直後にメンバーが脱退したため、ファンの間で洗濯物事件と呼ばれている。
他にはベース以外が突然脱退したアポロ計画がいる。また定義から少しずれるが、マキシマムザホルモンは、オーディションで結成したバンド(コロナナモレモモ,マキシマムザホルモン2号店)に楽曲の利用を許可した。これはオリジナル曲を持たないコピーバンド。
海外バンド
ベンチャーズ、ストラトヴァリウス、イエス、ナパームデス等はオリジナルメンバー不在バンド。その他ディープパープル、キンググリムゾン、ブラックサバス、ジューダスプリースト、アイアンメイデン、AC/DC等ほぼメンバーが入れ替わったバンドもある。
LAガンズは、メンバーのトレイシーガンズがバンド名の由来なのにもかかわらず、長らく本人不在時期が続いた。本人不在時にはオリジナルのLAガンズと、トレイシーガンズのLAガンズと同名で2バンドが存在した。
キッスのポールスタンレーは、キッスとは概念でオリジナルメンバー不在でも問題ないという発言をしている。同様の発言は相対性理論のやくしまるえつこもしている。
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