行動経済学とは?わかりやすく簡単に

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行動経済学とは、イスラエルの心理学者トベルスキーとカーネマンらが確立した、人間の心理的な行動から経済を研究する学問のこと。

歴史

背景

1900年、フランスの数学者バシュリエが、金融商品の値動きは過去の変動に関係なく不規則に動くと主張した(ランダムウォーク理論)。これは市場の予測が不可能ということを意味する。

彼は金融を数学で読み解く分野(数理ファイナンス)の先駆者となった。1960年代、アメリカの経済学者ファーマが、金融商品の価格にはすべての情報が直ちに反映されると主張した(効率的市場仮説)。

これはランダムウォーク理論と相性が良い。なぜなら、情報に支配される値動きは予測不可能と考えるため。たとえば日本で大災害が発生した時、情報が直ちに伝わり投資家が日本経済の減速を合理的に判断し株を売るため、日経平均株価が下落すると考える。

このように効率的市場仮説は、人間を自らの利益のみを追求し合理的に行動する存在(ホモエコノミクス)として扱う。2013年、ファーマが資産価格の実証分析に関する功績でノーベル賞を受賞した。

標準的経済学に対する批判

効率的市場仮説は、実体経済から金融商品の価格が乖離して高騰する現象(バブル)や勝ち続ける投資家がいることを説明できない。なぜなら、実体経済の情報をもとに合理的に価格が決定され、その情報は先に誰も知りえず抜け駆けはできないと考えるため。

バブルのように効率的市場仮説では説明できない現象をアノマリーという。アノマリーには、1月に株価が上昇する1月効果や、値上がりした銘柄はさらに上昇、値下がりした銘柄はさらに下落するモメンタム効果等様々ある。

またくじ引きのような不確実な事象の意思決定において、標準的経済学では、期待値(確率と値の積の和)の高い方が選ばれるとされていた(期待効用理論)。しかし、100%1万円か60%2万円失う選択では後者を選ぶ傾向がある。これは合理的な判断とは言えない。

アノマリー:https://nanikanochishiki.blogspot.com/2021/10/blog-post_37.html

行動経済学の誕生

1947年、アメリカの認知心理学者サイモンが、人間の認知能力には限界があり完全に合理的な行動はできないと主張した(限定合理性)。1978年、サイモンが意思決定プロセスの研究でノーベル賞を受賞した。

その後サイモンの考えを継承し、イスラエルの心理学者トベルスキーとカーネマンらによって、人間の心理学的な見地から経済にアプローチする行動経済学が生まれた。行動経済学は標準的経済学では説明できなかった事象を説明した。

2002年、カーネマンが行動経済学の確立でノーベル賞を受賞した。

行動経済学の主な功績

行動経済学の主な功績を以下に示す。

プロスペクト理論

1979年、トベルスキーとカーネマンが、不確実な事象の意思決定において収益よりも損失を避ける傾向を理論化した(プロスペクト理論)。プロスペクト理論は価値関数と確率加重関数からなる。

価値関数は、同じ金額なら利益よりも損失を重く考える傾向を示す(損失回避)。たとえば1万円の利益は約2万5千円の損失と同等となる。また価値関数は、金額が大きいほど金銭感覚が鈍感になる性質も示す(感応度逓減性)。

たとえば、数千万円の土地を買う時に数万円の差は大して気にしないが、ガソリン代は1円でも安く買いたいと考える傾向がある。確率加重関数は、約35%を境にそれ以下の確率を過大にそれ以上の確率を過少に考える傾向を示す。

たとえば、当選率の低い宝くじを購入したり成功率の高い手術を躊躇する傾向がある。 

ヒューリスティックと認知バイアス

トベルスキーとカーネマンが、人間が意思決定の手がかりとして行う経験や勘(ヒューリスティック)には非合理的な思考の偏り(認知バイアス)があることを示した。認知バイアスには、先に提示した値が後の値に影響を与える現象(アンカリング)等がある。

これを利用し、商店では標準価格を隠さず値引額を表示することでお得感を出す。

双曲割引

アメリカの心理学者エインズリーが、遠い将来は待てるが近い将来は待てない傾向を発見した(双曲割引)。たとえば、1年後に1万円か1年と1週間後に1万500円貰えるなら後者、今日1万円か1週間後に1万500円貰えるなら前者を選ぶ傾向がある。 

心の会計(メンタルアカウンティング) 

1980年代、アメリカの経済学者セイラーが、お金の意思決定において合理的でなく狭い枠内で損得を判断する傾向を概念化した(心の会計)。たとえば、ギャンブルで簡単に得たお金は浪費しがちだが、働いて得たお金は慎重に扱う傾向がある。

2017年、セイラーが行動経済学に関する功績でノーベル賞を受賞した。

行動経済学の応用

セイラーとアメリカの法学者サンスティーンが、自発的に良い選択をするよう心理学的に誘導する方法を概念化した(ナッジ)。たとえば、男子便器にハエの絵を描くことで床が汚れなくなり清掃費を減少させた。

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