ベツレヘムの星とは、イエス・キリストの誕生を知らせたとされる星のこと。
一般にイエスの誕生を祝福する星とされるが、エホバの証人ではイエスの誕生を敵に知らせる悪魔の星として扱われる。
新約聖書(マタイによる福音書)での描写
イエスがユダヤのベツレヘムで生まれた時、東方の三賢者がエルサレムへ来てこう言った。「ユダヤの王として生まれた方はどこにいるか、私達は東方でその方の星を見て、その方を拝むために来た。」それを聞きヘロデ王は動揺した。
ヘロデ王は三賢者に星が現れた時期を詳しく聞き、イエスを見つけ次第報告するよう伝えた。三賢者が旧約聖書で救世主の誕生が預言されていたベツレヘムへ出かけると、東方で見た星が彼らの先を行きイエスのいる場所の上でとどまった。
そこで彼らはイエスを祝福し、夢でヘロデ王に報告しないようお告げがあったのでそのまま帰国した。その後、イエスの存在を恐れたヘロデ王はベツレヘムとその周辺にいる2歳以下の男児をすべて処刑したが、イエスはお告げによってエジプトに逃れていた。
イエスはいつ生まれたのか
新約聖書にはイエスの生年が記されていないため、ベツレヘムの星がいつ現れたのかは不明。但し、ヘロデ王の在位は紀元前37年~4年と推定されるため、イエスの誕生は少なくとも紀元前4年以前ということになる。
また新約聖書のルカによる福音書に、カエサル治世の15年イエスが約30歳の時に宣教を始めたとの記述がある。そこから逆算すると、仮に宣教開始が32歳だった場合は紀元前4年生まれとなる。一般にイエスの生年は紀元前6年から4年頃と考えられている。
ベツレヘムの星の特徴
ベツレヘムの星の特徴として、紀元前4年以前に現れた点、三賢者には見えヘロデ王には見えなかった点、東方で西の空に、エルサレムで南の空に計2回間隔を空けて現れた点等があげられる。
新約聖書には東方の位置が記されていないため、三賢者の移動期間、すなわちベツレヘムの星の出現間隔は不明。一般に出現間隔は数週間から数年と考えられている。
ベツレヘムの星の正体
ベツレヘムの星の正体について主な説を以下に示す。
流星説
流星とする説。流星は一瞬で消えるため、イエスのもとへ導きとどまったという記述を説明できない。
彗星説
彗星とする説。紀元前12年、中国の書物にハレー彗星の観測記録があるがイエスの生年予測と合わない。紀元前5年、中国の書物に彗星と見られる星が70日間現れたという観測記録がある。
会合説
複数の天体が見かけ上極端に近づいて一つに見える現象(会合)とする説。紀元前7年、木星と土星が約6ヶ月間で3回にわたって会合した。但し、この時の会合は1つの星に見えるほど近づいていないが、新約聖書では星が単数形で記されている。
超新星説
大質量の恒星が突然強い光を放ち爆発する現象(超新星)とする説。超新星が現れた場合は数週間から数ヶ月ほど観測できるが、この時期の世界中の書物に超新星が出現したという記録は確認されていない。
17世紀、ドイツの天文学者ケプラーは会合により超新星が出現するとし、紀元前7年の木星と土星の三連会合で超新星が生まれたと主張したが、後に会合と超新星は無関係だと明らかになった。
惑星食説
惑星が他の天体の影響で隠れて見える現象(食)とする説。紀元前6年、3月20日と4月17日に月による木星食が起きた。この時の木星食は時間的に肉眼で見えなかったため、天文学に精通している三賢者のみ予測できた(比喩的に見えた)と考える。
更に3月20日は西の空、4月17日は南西の空で起きているため、方角もほぼ一致している。
変光星説
膨張と収縮を繰り返し星の明るさが変化する星(変光星)とする説。くじら座の恒星ミラは、約332日周期で明るさが2等星から10等星まで変化する。10等星ともなると肉眼で確認できないため、出現と消失を繰り返すように見える。
フィクション説
フィクションとする説。新約聖書の4つの福音書(マタイ、マルコ、ルカ、ヨハネ)には、同じエピソードでも互いに矛盾する記述がある。このことから、聖書には作者による創作が含まれると考える。
奇跡説
奇跡とする説。聖書には多くの奇跡の記述がある。
文化として
クリスマスツリーの先端に飾られる星はベツレヘムの星を模したもの。また日本や北欧でクリスマスソングとして扱われる「星に願いを」は、ベツレヘムの星を指す。
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