法令違憲とは?わかりやすく簡単に

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法令違憲とは、最高裁判所がある法令を憲法に反するとした判決のこと。

概要

憲法とは国家統治の基本ルールのことで、法律や命令よりも強い効力を持つ(憲法第98条)。つまり、憲法に反する法律を作る事はできない。ある法律が憲法に反しているか否かを判断する権限は最高裁判所にある(憲法第81条)。

但し、ただ単にある法律が憲法に反するという訴えを起こすことはできない。あくまで原告側が権利の侵害等を訴えた場合に裁判が開かれる。

違憲判決の種類

違憲判決は大きく2種類ある。

法令違憲

法令が違憲となった判決のこと。法令違憲となった場合、ただちにその法令が廃止されるわけではない。なぜなら立法は裁判所(司法)ではなく国会が行うため。但し、裁判でその法令が適用されることは無くなるため事実上死文化する。

適用違憲

法令自体は合憲だが当該訴訟への適用が違憲となった判決のこと。広義では処分違憲も含まれる。処分違憲とは法令の適用ではなく処分の行為が違憲となった判決のこと。この場合、憲法と法令ではなく憲法と処分行為の関係が争点となる。

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判例

法令違憲の判例を以下に示す。

尊属殺人重罰規定

1973年、栃木実父殺害事件において最高裁判所は刑法第200条(尊属殺人罪)が憲法第14条(法の下の平等)に反するとした。尊属殺人罪とは、自己または配偶者の父母以上の直系親族を殺した際に適用されていた、殺人罪よりも重い刑罰のこと。

殺人罪が死刑または無期もしくは3年以上の懲役に対し、尊属殺人罪が死刑または無期のみと極端に厳しく差別的で違憲と判断された。

薬事法距離制限規定

1975年、薬局距離制限事件において最高裁判所は薬事法第6条(薬局距離制限)が憲法第22条(営業の自由)に反するとした。当時の薬事法では、薬局の設置は一定の距離を置かなければならなかった。

立法目的は薬局の乱立による価格競争で粗悪な薬が出回るのを防ぐためだが、不当な手段で違憲と判断された。

衆議院議員定数配分規定(1976年)

1976年、1972年12月10日に行われた衆議院議員選挙において、最高裁判所は一票の格差(1対5)が憲法第14条(法の下の平等)と第44条(議員及び選挙人の資格)に反するとした。一票の格差とは、同一選挙の選挙区間で有権者一人当たりの票の価値の差のこと。

但し、選挙の取り消しは著しく公益を害するとして選挙は有効とした(事情判決)。

衆議院議員定数配分規定(1985年)

1985年、1983年12月18日に行われた衆議院議員選挙において、最高裁判所は一票の格差(1対4.4)が憲法第14条(法の下の平等)と第44条(議員及び選挙人資格)に反するとした。1976年同様に事情判決となった。

森林法共有林分割制限規定

1975年、森林法共有林事件において最高裁判所は森林法第186条(共有山林の分割請求権の否定)が憲法第29条(財産権の保障)に反するとした。当時の森林法では、共有山林の分割は過半数を持つ者でないとできなかった。

立法目的は森林の細分化を防ぎ森林経営の安定化を図るためだが、不当な手段で違憲と判断された。

郵便法免責規定

2002年、郵便法事件において最高裁判所は郵便法第68条(損害賠償責任)と第73条(損害賠償請求者)が憲法第17条(国家賠償請求権)に反するとした。当時の郵便法では、特定の者と事故以外は郵便物の賠償請求ができなかった。

立法目的はすべての事故の賠償は現実的に不可能なためだが、書留郵便物等について故意または重過失がある場合は違憲と判断された。

在外邦人の選挙権制限規定

2005年、在外日本人選挙権訴訟において最高裁判所は公職選挙法が憲法第15条(選挙権の保障)と第44条(議員及び選挙人の資格)に反するとした。当時の公職選挙法では、日本国外の国民の投票を認めていなかったため、違憲と判断された。

非嫡出子の国籍取得制限規定

2008年、婚外子国籍訴訟において最高裁判所は国籍法第3条が憲法第14条(法の下の平等)に反するとした。当時の国籍法では、日本人の父と外国人の母の非嫡出子(婚姻関係のない親の子)は胎児の時点で認知されていない限り日本国籍を取得できなかった。

認知の時期が異なるだけで国籍取得に差ができることは差別的で違憲と判断された。

非嫡出子の法定相続分規定

2013年、最高裁判所は民法第900条第4号(非嫡出子の相続分)が憲法第14条(法の下の平等)に反するとした。当時の民法では、非嫡出子の相続分は嫡出子の2分の1となっていたが差別的で違憲と判断された。

女性の再婚禁止期間規定

2015年、再婚禁止期間訴訟において最高裁判所は民法第733条(再婚禁止期間)が憲法第14条(法の下の平等)と第24条(男女平等)に反するとした。当時の民法では、女性の再婚禁止期間は6か月となっていた。

立法目的は父の推定のためだが、100日を超える再婚禁止期間は違憲と判断された。民法では離婚後300日以内は前夫の子、結婚後200日以降は現夫の子としている。

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